出版のきっかけは、平成19年に静岡市産学共同研究の助成をうけ、静岡市にある信建工業と聖隷クリストファー大学で「レイズドベッド」の有効性をリハビリテーション医学の面から研究する機会を得たことにあります。
レイズドベッドは高齢者や身体障害者が園芸を楽しめるように床からプランター部分を立ち上げたものです。精神障害者にとっても、無理のない姿勢で園芸作業が可能になるため、可動性の低い対象者にむいています。
「リハビリテーション」という題ですが、作業療法士による作業療法のための園芸療法論と技法がまとめられています。
例えば、身体障害者の動作にあわせたレイズドベッドの調整(第3章 園芸療法の計画、3節 能力化、可能化)、精神科病院における作業療法での個別プログラムおよび集団プログラム(第4章 対象別園芸療法の実践)など、作業療法士の観点からわかりやすく説明しています。
また、作業療法として、植物を育てる活動のみではなく、植物を使った簡単な耕作や装飾についてもふれています(第6章 収穫と加工)。
障害者のみではなく、高齢者やヘルスプロモーションとしての園芸について言及しています。高齢者では目的別に覚醒と鎮静、介助の場としての利用、社会参加としています。ヘルスプロモーションでは「親子市民参加の健康の森づくり」「子ども参加の田んぼづくり」「理学療法および作業療法を学ぶ学生と保育園児とのサツマイモづくり」などです。
園芸療法を行うための環境づくりは、リハビリ対象者の動機づけに深くかかわってきます。この本では、環境デザインの概念と手法について、日本国内および米国のラスク・リハビリテーション医学研究所などの例を紹介しながら分かりやすく説明しています。
上記のポイントなどから、作業療法学における園芸療法の教科書として、または副読本として非常に有用です。